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Fleeting promise【魔法使いの約束】

第2章 運命を持たぬ者




「"北の魔法使いは怖い。ものすごく強い。仲が悪い。自己中心的。"……わぁ、前の賢者さん、"こいつら世界が滅びても生き残る"って書いてる……そこまで言わせるって……」

「なんか前の賢者、本当に苦労してたんだって思うよ……」



互いに苦笑しながらページをめくると、北の魔法使いについて詳しく書かれていた。

代替わりしても生き残っているだろうからと、そう書かれていたが、前賢者の推測通り、北の魔法使いたちは見事に生き残っている。



「"スノウとホワイト。比較的温厚。最年長の魔法使いで数千年生きてるって話"。想像以上に長生きなんだな……」

「"ブラッドリー。要注意。犯罪集団の頭だった。今は囚人。起こるとマジ怖いけど、食べ物でやや懐柔できる"。……なんか単純そう」

「オーエン。要注意。不気味。会話すると精神が崩壊しそうになる。興味を持たれないようにしていれば大丈夫"。カインから聞いた人だ。怖いな……精神が崩壊って……茜?どうしたの?」

「ううん、なんでもない。私も怖いなって思って……」



オーエンという名前を見た途端、先程のことを思い出して深刻な顔をしてしまっていたらしい。

彼にあったことはまだ誰にも話してはいない。おそらく話した方が良い案件ではあるのだが、自ら話す気には中々なれずにいた。それにオーエンのことはまだ詳しく知らない。

前の賢者がどう思っていたとしても、私の勝手な見解で彼のことを決めつけるのは嫌だったからだ。ただ先程のことからして、ここに書かれていることは間違いではないのだろうが。



「この人、きっと言葉が上手なのね。もちろん、良い意味ではないのだろうけれど」



実際に彼に言われた言葉を思い出せば、嫌なことばかりが蘇ってくる。

ふるふると首を振って忘れようとすると、兄は心配そうに私の顔を覗き込んできた。その表情があまりにも悲しそうだったので、私は誤解させない程度の笑顔を返した。


「なんでもない。大丈夫」

「……何かあったらちゃんと言ってね」



心配そうな表情を背けて兄は賢者の書へ視線を戻した。ペラリとページを捲ると"MAX注意"と書かれているのが目に入った。

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