Fleeting promise【魔法使いの約束】
第1章 壊れかけの世界
おじやは魔法使いたちにも中々好評な料理のようで、皆喜んでくれていた。
(ほとんどヒースクリフが作ってくれたようなものだけど……)
結局私たちがしたことといえば、珍妙な材料に翻弄されて、ヒースクリフから魔法使いについて色々聞かされたぐらいだ。
けれどヒースクリフも皆が喜んでくれたことが嬉しいのか、満足そうなので構わない。
「そじやじゃ」
「もじやじゃろう」
「おじやですよ、塩かけま……」
「あ、カイン!!」
「いってえな!なんだいきなり!」
私が止めるまもなく、立ち上がったカインはそばに居たブラッドリーに激突してしまう。
また、カインは他人が見えていない。さっき食堂に戻ってきた時も、彼は私と兄しか見えておらず、ヒースクリフの存在に気づいていなかった。
(そういえば私のことは最初から見えていたみたいだけど、カインが見えないのは魔法使い限定なのかな)
ぼんやりそんなことを考えながら魔法使いたちを眺める。それぞれが個性的な性格で、なんだか猫たちの集団に似ている。自分たちの好きなように気ままに過ごすところが特に。
話を聞いていると、ムルは〈大いなる厄災〉の研究をしていたことを知った。けれど魂の砕けた今の彼にそんなことを聞いても無駄のようだ。
私はポケットに入れた欠片に服の上から触れた。この欠片のムルなら〈大いなる厄災〉についてもっと話してくれるのだろうか。そもそも欠片のムルはまた私の前に現れてくれるのだろうか。
そんなことを悶々と考えながら、私はおじやを口へと運んだ。