Fleeting promise【魔法使いの約束】
第1章 壊れかけの世界
「お兄ちゃん、何が起こっているの……?」
「……分からない。分からない、けど」
きっとこれは夢だ、と兄は言った。それ以外に言葉もなかったのだと思う。
私も素直にそう思う。こんなリアルな夢があっていいわけがない。それでも夢だと思わなければ、私たちはパニックに陥ってしまっていたはず。
いいや、パニックなのは変わりない。目の前の不可思議な現象の連続に、頭が全く追いついてこないのだから。
「お2人とも!こっちです!」
美形の青年が呼ぶ方へと私たちは駆ける。
目の前に広がる見慣れない景色、武装して私たちを追いかける兵士、そして箒で空を飛んで魔法を使うーーー魔法使い。彼らに連れられて私たちは空へと舞い上がる。
夜空に浮かぶ月はとても大きくて美しくて、そのまま落ちてきてしまいそうなほどだった。
(ここは一体どこなの?私たちは……これからどうすればいいの……?)
何も知らないこの世界にやって来た兄と私の運命は、一体どこで狂ってしまったのだろうか。ただ私は大好きな兄や優しい両親たちと、平凡な暮らしをしていただけなのにーーー。