Fleeting promise【魔法使いの約束】
第1章 壊れかけの世界
「約束をしよう」
私はいつだって守られるだけの存在にしかなれない。特別な力で世界を救うとか、そんな物語の主人公のようになんてなれるわけもない。それはいつも別の誰かの役目で、私はただの脇役ぐらいしかならないのだから。
力を欲しいと思ったことはない。特別な存在になりたいと思ったことはない。強くなりたいと思ったことはない。私は私として生きられればそれで十分だった。
「約束を破れば魔法使いは魔法の力を失う。それでも、約束がしたい」
だけどいつからか、私は彼らの力になりたいと思い始めていた。今までの自分で居たくない。力が無くても、特別な存在でなくても、強くなくても良い。ただ、彼らの傍に居られる存在になりたかった。
「僕はきみにこの世界の行く末を見届けてほしい。たとえ僕らが石になっても、それを運命と受け入れてほしい」
この世界はとても美しい。故にとても残酷だ。
「お前を守ると、そう決めたんだ。だから俺は何も怖くない」
だけど壊れかけのこの世界を、決して憎んだりはしない。
「恐怖がないわけじゃない。だけど守りたいものがあるのなら、恐怖なんてしてられないんだ」
そう遠くない未来が明るいものでなかったとしても。
「俺たちのこと、何があってもあんただけは覚えていてくれよ」
私はこの世界で彼らと生き続けていきたいから。