Fleeting promise【魔法使いの約束】
第1章 壊れかけの世界
「……そう、かもしれませんね。そう考えてみると、シャイロックさんもブラッドリーさんも、私の想像していた魔法使いとはだいぶ違いますけどね」
「おや、差し支えなければどのようなイメージを持たれていたのかお聞きしても?」
「……私の中では多分、カインさんやヒースクリフさんがそれに近いですね。正義感が妙に強いところとか……。あとはムルさんも魔法使いによくいるタイプの方です」
「あのムルがですか?」
あのムルが私のイメージに当てはまってしまうことが可笑しかったのか、シャイロックは苦笑して尋ね返してきた。
「自由奔放なところとかは特にそうですね。シャイロックさんはどちらかというと……いえ、何でもないです」
「そのような言い方をされると余計に気になりますね」
「……その、怒らないでくださいね?……どちらかというと魔法使いより魔女のイメージに近い……です」
と、直後にブラッドリーが盛大に吹き出した。シャイロックが立ち止まり笑みを浮かべたまま、大笑いする彼の方を振り返る。
「ブラッドリー、いくら何でも笑いすぎですよ」
「はははっ!魔法使いじゃなくて魔女だと!こりゃ他の魔法使いどもにも教えてやりてえな」
「私は気にしませんのでどうぞご勝手に」
(目が全然笑ってないんだけど……私、余計な事言っちゃったかな……)
私の心配をよそに、ブラッドリーはけらけらと笑い転げる。ちらりとシャイロックの様子を窺えば、これまた不敵な笑みを向けられていた。
「ご、ごめんなさい……」
「別に謝らなくてもいいですよ。魔法使いも魔女も、結局は同じ生き物ですからね」
(うぅ……言わなきゃ良かった……)
シャイロックから視線を逸らして再びブラッドリーを見れば、彼はまだ腹を抱えて笑っていた。