Fleeting promise【魔法使いの約束】
第1章 壊れかけの世界
私は魔法使いたちを見上げて首を横に振った。彼らに非がないのは分かっている。
ただあまりにも驚きの連続に、私の体が悲鳴をあげ、安心しきったところで一気に負荷がかかってしまったのだろう。自分の体のことは自分がよく知っている。
すると兄が私の手を握りながら苦しそうな表情で言った。
「茜は……妹は喘息持ちで、他の人よりも体が弱いんです。だから余計なんじゃないかと……」
「喘息……?」
「えっと……アレルギー性の炎症で気管支が狭くなり、呼吸困難などを起こす病気です」
「……賢者様の世界の言葉でいくつかはよく分かりませんが、とにかく妹さんは病弱ということなのですね?」
「はい……簡潔に言うとそういうことになります……」
「それは困りましたね……」
シャイロックが何かを考えこむようにパイプを揺らしていたが、やがて顔に傷のある青年へと視線を向け、にっこりと笑みを浮かべた。
「ブラッドリー、妹さんを部屋へ案内しましょう。手伝っていただけますか?」
「はぁ?なんで俺がてめえの言うことを聞かなきゃなんねえんだ」
「これブラッドリー、そのようなことを言うでない」
「おぬしにはこれから慈善活動をしてもらわねばならんからのう。その一つ目として、シャイロックに付き添ってくるのじゃ」
「はぁ!?」
ブラッドリーと呼ばれた青年は双子の言葉にあからさまに嫌そうな顔つきをして、それから私の方を見てこれまた面倒くさそうな様子を見せる。
「あの、私は本当に大丈夫ですから……」
「大丈夫と言う割に、お一人では立つことも出来ないようですが?」
「それは……」
私は返す言葉をなくしてしまった。確かにシャイロックの言う通り、自分の足で歩くことはおろか、立ち上がることもままならない。
今は兄に体を支えてもらっているが、正直起き上がっているのも辛いぐらいだ。