Fleeting promise【魔法使いの約束】
第1章 壊れかけの世界
兄が迷いながらも彼の手に自分の手を重ねると、小さな風が吹き、徐々に激しくなっていく。重なった手から光が溢れ、オズの体全体を覆っていく。
「《ヴォクスノク》」
オズが不思議な言葉を口にすると、淡い光が溢れて横たわったファウストの体へと吸い込まれていく。そして魔法使いたちが必死に声をかけ続けると、ファウストの瞳がきつく閉じられ、彼は身動ぎ呻いた。
「ファウストさん……?」
「……そんなに不安そうな顔をせんでも良い。ファウストは助かったのじゃ。おぬしの兄のおかげでの」
「そうですか……良かった……」
ほっと胸を撫で下ろすと、双子は兄の前へと歩み寄る。
「ご苦労じゃった、賢者よ」
「ファウストが助かったのもそなたのおかげじゃ」
「俺は何も……」
「そんなことはありません。賢者様たちは俺たちの言葉をちゃんと聞いて、ここに来てくれました。だからファウスト先生は助かったんです」
兄が魔法使いたちに感謝される姿を見て、私はにっこりと笑みを浮かべた。
自分のことではないのになんだか嬉しくて、兄の手をそっと握る。兄も魔法使いたちの感謝にほっと息をついて笑いかけ、私の手を握り返した。
やがてファウストが深い眠りにつくと、ふいにオズが部屋を出ていこうと身を翻した。双子やカインが彼を止めようと言葉を投げかけていたが、オズは馴れ合う様子もなく、部屋を後にしようとする。