Fleeting promise【魔法使いの約束】
第1章 壊れかけの世界
「お、やっと笑ってくれたな」
「あ、ごめんなさい。皆さん大変そうなのに私ってば……」
「いいや、構わない。突然こんなことになって不安だらけなはずだから、不安そうな顔をされるより笑顔でいてくれる方がよっぽどいい」
そう言われて私は改めて今の状況を理解することとなった。
ここはきっと私たちのいた世界じゃない。見たことの無い景色に、不思議な魔法があって、そんな全く別の世界へやって来てしまったのだと。そして今、私たちは魔法使いたちとともに、彼らの仲間の元へ向かっている。
先程居た方を振り返ると、東京タワーに似た塔が見えた。
「……お嬢さん、ひとつお聞きしても?」
「えっ、はい、なんでしょうか?」
ふと私たちの横にやってきたシャイロックに声をかけられ、私はそちらへと顔を向けた。
彼はカインとまた違った紳士さを持っており、こういう人を色男と言うのだろうかと感心してしまう。
「私たちは賢者の力を借りるため、あなた方に同行をお願いしましたが、一体どちらが賢者様なのでしょう?先程はそれを聞く余裕もありませんでしたので、良ければ教えていただいても?」
「それは俺も聞きたい。もしかして兄妹揃って賢者ってことはあったりするのか?」
また、私たちのことを賢者かと尋ねてきた。彼らの言う賢者とは一体何のことなのだろう。
よくある異世界召喚にある展開に似ているが、これもそれと同じようなものなのだろうか。そうだとしたら私たちはとんでもないものに巻き込まれてしまったはずだ。こういうものは大抵、召喚された者はその世界にとって重要な人物となる。
兄もさっきまで撮影だとか夢だとか、現実を受け入れたくないような感じであったから、あまり深入りはしたくない。けれど彼らについて行くと決めた以上、もう後戻りも出来ないのだ。