第1章 第一章 消えた天才作詞家
こうなったら食べて、食べて食べ尽くしてやる!
「まったく、社長に迷惑をかけるなんて」
「ナンパして来たのは音晴さんよ。私は悪くない」
「ナンパ!」
「はは…そうだね?ある意味ナンパかな?」
ノリの良い音晴さんは私に合わせてくれた。
万理はショックを受けているが、ざまぁ見ろだわ!
「偶然道端で会ってね?野宿すると言っていたから…ついね?」
「野宿!お前…住まいは?」
狼狽する万理に簡単に説明する。
まぁ、色々かかいつまんで話したから星影とのことは話さなかったけど。
「ホテル住まいだったけど、職無くしたからとりあえず野宿か漫画喫茶…後は逆なんしてそのままの選択もあったけど」
「最後はダメだろ!」
「無職なんだからホテル住まいはまずい」
お金がかかるし、行きつけのホテルはまずい。
北斗と昴にバレるし、万一の事を考えて身を隠さないと。
「今まではどうしてたの?」
「ホテルを転々とするか、後は社長のマンションに寄生」
「ブッ!」
飲んでいたウーロン茶を噴き出す。
「一緒に住んでいたの?」
「岡崎社長の部屋に転がり込んでいた。ほぼ同棲みたいな?」
「みたいなじゃないだろ!何考えてんだ!」
別に家事は交代制にしていたし、太郎ちゃんはいいよって言ってくれたんだからいいじゃない?
「万理、変な早々しないでくれる?変態」
「変態…」
確かに若い男女が一つ屋根の下では色々妄想してしまうだろうが、太郎ちゃんはそんなことをしない。
基本、あの人は紳士だもの。
私が一人でマンション暮らしをするのを心配したからだ。
後は仕事で忙しい私を気にしてお世話をしてくれただけ。
「岡崎社長はどっかの誰かさんと違って紳士よ?お持ち帰りしたりしないわ」
「万理君…」
「社長!違うんです!」
フンッ、いい気味だ。
勝手に失踪して、捨て猫の世話を私に押し付けた事を悔いるがいいわ。
「詩!」
「馴れ馴れしく愛称で呼ばないでください大神さん」
「うっ…」
冷たい視線で睨めばたじろぐ万理。
言っておくけど私は怒っているんだから。
「やっぱり怒って…」
「別にぃ~?やり逃げのとんずら男の事なんて少しも怒ってませんよ?」
「やり逃げ…」
「違うんです社長!信じてください!」
うわぁ、面白い。
しばらくこのネタで遊んでやろう。