第1章 第一章 消えた天才作詞家
そんなこんなで、私は音晴さんに連れらて小鳥遊芸能事務所に来ていた。
はずだったが…
「え?詩音?」
「OUT!!」
バァン!
速攻で扉を閉めた。
「音晴さん、やっぱり野宿で結構です」
「まぁまぁ、そう言わずに」
何で奴がいる?
蒸発していなくなったはずの奴がいるなんて聞いていない。
「ちょっと!扉を開けて!」
ドンドン!!
ドアノブを握りしめ、開けられないようにするが、煩かった。
「こら!開けなさい!」
「はい」
「ぶっ!」
あんまりにも煩いから素直に開けてあげると、扉に顔をぶつける。
「何やってんの?」
「いきなり開けるな」
「我が儘だな…開けろって言うから開けてあげたのに」
なんて奴だ。
久しぶりに会って我儘まを言うとはけしからん。
「音晴さん、なんの冗談?」
「彼はうちの事務員だよ」
「…ソウデスカ」
即刻退場すべきだ。
これ以上ここにいる必要はない。
「アデュー」
「ちょっと待った!何、普通に出て行こうとしているの」
「お構いなく」
「構うから、とにかく事務所に入って」
逃げようとするも、前と後ろで塞がれているので難しい。
「えー…やだ」
「やだじゃない!我儘言わないの」
「ここが嫌なら場所を変えようか」
音晴さんは気を使ってくれたみたいだけど、私が言いたいのはそうじゃない。
「できれば、この事務員さんも無しでお願いします」
「それは…」
「俺は大丈夫です社長」
キリッとした表情で言うけど、私は絶対に嫌だった。
「私は嫌、食事がまずくなる」
「ねぇ、酷くない」
「二人だけでどうぞ」
何が哀しくて万理と一緒に食事何てしなくて茶ダメなの?
私は絶対に行くもんか!
そう思っていたのに。
「さぁ、遠慮なく食べてね!」
「俺、焼きますよ」
「ありがとう万理君」
結局私は簀巻きにされて強制連行された。
なんという屈辱。
なんという辱め。
嫌がらせだ!
隣で私を無視して肉を焼いている二人にイライラが募りながらキャベツを貪った。