第1章 第一章 消えた天才作詞家
❁❁❁ 凛人side ❁❁❁
今なんと言いましたか?
兄さん。
「あの、何て…」
「聞こえなかったか、詩音が失踪した」
「失踪!何故です!」
兄の突然の宣告に僕は平常心を保つことなんてできなかった。
「詳しくは知らないが、曲に関しては問題ない。あの二人にどう説明するかだ」
「ちょっ…」
「まぁ、納得はしないだろうが。なんとか誤魔化すしかない。幸いにもうちには優秀な作曲家にプロデューサーがいるから問題は…」
そうじゃない!
僕が言いたいのは、失踪した彼女を探さないのかと言う事だった。
「どういうことだ」
「凛太郎!」
「昴さん、北斗さん!」
会話を聞かれていたようですね。
「凛太郎…お前、アイツを売ったのか」
「業界で噂になっている。星影から圧力をかけられていたってな!」
星影に?
詩音さんが?
「兄さん…」
「だとしても、美味く立ち回れなかったのは彼女だ。星影を敵に回せばどうなるか解っているだろう」
「お前、何処までも腐ってんだ!ふざけるのも大概にしろよ…アイツを担当から外して、今度は追い出したのか」
「選んだのは彼女だ」
兄さん。
それはあまりにも残酷ではありませんか?
彼女の事だ。
きっと千君を守る為に仕方なかったはずなのに。
「社長は…解っていたはずです」
「アイドルを守るのが俺達の仕事だ」
「「くっ!」」
その言葉に僕だけでなく二人も反論できなかった。
「不本意だが、あの二人に真実は告げない。酷だからな」
「彼女も望んでいいないだろう…だが、俺はアンタを許さない」
普段から折り合いが良いとは言えませんでしたが、仕事の時は互いに信頼し合っていたのに。
二人は詩音さんを大切に思っていたからこそ許せなかったのかもしれません。
Re:valeがデビューしてからずっと運命共同体として頑張ってきましたが、途中でプロデュースチームから外されたのは#NAME1#さんでした。
そのあげくこんなことになるなんて。