第2章 第二章 未完成な音色
ようやく唇が離れたと思った時、私は我に返った。
「あっ…あう」
「真っ赤だな」
なっ、この男!
私の反応を見て楽しんでいる。
「残酷…万理は平気でこんなことするんだ」
「えっ…ちょっ!何で泣くの?」
哀しくて泣けてきた。
人は変わってしまう生き物何なんだと改めて思い知った。
「万理はそうやって女の子を口説いてたんだ。私を弄んだの?」
「ちょっと人聞きの悪いことを言わないで」
「その詩‥まさか見たの!」
床に散らばる曲と詩を見て絶望する。
作曲を辞めてから密かに書いていたのは万理への思いを綴ったラブレター。
心に留めるには辛過ぎたから。
だから曲にして心から出した。
「出て行く!」
「えっ…ちょっと!」
「こんな最低男と一緒にいれない!」
私の気持ちは万理にバレた。
なら一緒にいれないし、何より好きでもない女の子にこんなことをするなんて。
「千みたいになったの?」
「は?」
「好きでなくても男はキスできる。遊びでキスなんて普通にするって」
じんわりと涙が浮かぶ。
泣いちゃダメだって解っているけど、万理はそんなことをしないと思っていた。
勝手な想像なのに。
「そうよね?万理だって男だし?」
「だから違うって!」
「でも、妹みたいに思っている私にまで見境ないのはどかと思うわ」
高校の時から万理は私の世話を焼いてくれていた。
妹の様に世話をしてくれた。
でもそんな相手にまで!
「本命ができた時に信用されなくなるよ。じゃあサヨナラ!」
「だから違うって!話を聞けよ!」
部屋を出ようとする私の手を無理矢理引き、万理の腕の中に捕らえられる。
「聞いて、俺はそんな不誠実なことはしない。まぁ欲望はあるけど」
「あるんじゃない」
「けど、好きでもない子にしない」
じゃあ何で今しているの?
「いい加減に俺の気持ち気づけよ!鈍いにも程があるだろ!」
「何で私が怒られるの!怒りたいのは私だ!」
普通怒るは私なのに何でお説教?
訳解らない。
「この曲、俺へのラブレターだろ」
「寝言は寝てから言って。相手は…」
「フーン、俺の名前書いているんだけど」
「たまたまなんだけど?」
やばい、万理のイニシャル書いてたんだ。
でもそれだじゃ解らないし。