第2章 第二章 未完成な音色
曲のタイトルをと詩を読んで俺は固まった。
楽譜には高校時代から詩音楽譜にサインを入れる癖があったので手書きだと解っていた。
「まずい」
顔がニヤケそうになると同時に、帰り際にあの二人が言った事を思い出す。
「そうだ、最後にアドバイスしておくぜ」
「はい?」
「作曲家や作詞はが特定の誰かに曲や詩を贈るのはラブレターだ」
「はぁ」
意味深なことを言う北斗さんに俺は未だに理解していなかった。
「詩音は曲や詩には嘘がつけない」
「えーっと」
「まぁ、そんなわけだ!」
そう言いながら颯爽と去って行った。
その意味を今理解した。
「はっ…恥ずかしい」
いい歳した大の男がなにやってるんだ!
「中坊じゃあるまいし」
真っ赤になる顔を隠しながらも、詩を読むと心が満たされる気分で自惚れてしまう。
「詩音…」
調子にのっちゃうよ?
こんな詩を書くなんて。
しかもご丁寧にこんなタイトルをつけて、しかも小さくメッセージ付きだし。
「とりあえず、見たのバレたら…」
絶対怒るに決まっている!
明日朝一で、確認してみよう。
そう思ったが…
「うーん…」
「え?」
「うみゅ…」
ぼんやりした表情で詩音が起きてしまった。