第2章 第二章 未完成な音色
初めて詩音に会ったのは誰もいない音楽室。
旧校舎の音楽室った。
その時俺は感動して、その音楽に心を鷲掴みにされたようだった。
音楽は好きだけどクラシックにはそこまで興味なかったのに、詩音の音楽に惹きこまれた。
まるで音が生きているみたいなのに。
なのに音色はすごく泣きそうだっようにも思える。
「詩音はずっと傷ついていたんですね」
「音楽を辞めてしまうんじゃないかって思ったけど、そんな時だ」
「君の事を聞かされてね」
千じゃなくて俺?
「素敵な歌を歌う人がいる。その人の歌声なら雑音が聞こえない、曲を作っても怖くないってね」
「俺の?」
「しばらく音楽から遠ざかっていたから、驚いたさ」
「でも、同時に嬉しかったんだ」
二人はどんな思いで見て来たんだろうか。
「詩音はな、君の事が大好きなんだ。一時は妬いた。十数年一緒だった俺よりも君の事を慕う姿を見て」
「まぁ、しょうがないよね?万理君の方が優しいし?詩音の好みストライクゾーンだったし」
え?
ストライクゾーンだった?
俺が?
「えーっと。千は?」
「「ないない!」」
俺よりも千の方が好かれると思ったが二人はないないポーズを取った。
「あのデビル?絶対ないわ」
「詩音の好みから180度かけ離れているし、あのクソガキ、即フラれていたよな」
「ああ、暴力を好まない詩音が合った瞬間股間にケリ一発だったな」
「そんなことしたんですか!」
これは初耳だった。
バンド仲間でも千に惚れない女の子はいない。
遊びでもいいから付き合って欲しいと言う子はいても拒絶する子はいなかったのに。
「詩音の好意は解りやすいだろ?おっとと…というぐらい」
「これほど解りやすい人もいないと思うけど」
そういえば緑さんにも同じ様な事を言われた気が。
「万理君、君は詩音を音楽の世界引き戻した人だ。だから…もう一度音楽に引き戻せるとしたら君以外いない」
「今の彼女は疲れ切っている。音楽をすることにも」
でも、音楽を捨てたら本当に死んでしまうかもしれない。
「万理君、恥を承知で頼む」
「詩音を助けてくれ」
だから俺は、もう一度君を見つけるよ。