第2章 第二章 未完成な音色
今すぐ文句を言ってやりたいけど、昔から二人に口で勝てたことは一度もない。
「さて、俺達に言う事は」
「黙って出て行って、謝罪もないとは…ないよね」
「スイマセン」
二人の視線に私はビクつく。
関節を鳴らしながら脅す目はヤクザ顔負けだった。
「まぁ、今回ばかりは俺達にも責任がある」
「星影を舐め過ぎた。奴らがお前に接触しているのは知っていたが、脅しているとは思わなかったね」
二人はため息をつきながら疲れた表情をする。
「星影、ツクモの二大芸能事務所は厄介だ。お前の判断は間違ってはいないが…もう少し後先考えろ」
「考える暇がなかったんだけど」
すぐに先手を打たないとまずかったんだもん。
二人に相談する暇はなかったし。
既にツクモからも圧力かけられていたんだから仕方ないじゃない。
「だったら遺書まがいな書置きはやめろ!何だ…辞めます。探さないでくださいって!」
「詩音!そんな書置き残したのか!」
「もっと言ってやってくれ。この馬鹿の所為で後始末がどれだけ大変だったか」
万理だけでも小言が煩いのにさらに二人まで小言を言うなんて最悪だわ。
「ウー…」
「本当はもっと言いたいことはあるが…体調が悪そうだから今度にする」
「覚えててね」
それは遠回しに又来ると言いたげだった。
「詩音、まだ病み上がりだから寝てて」
「うー‥」
万理が頭を撫でながら私をベッドに寝かしつける。
「でも私…」
「ダメ、自分の体調管理もまともにできない癖に」
ごもっとも過ぎて何も言えない。
「ほれ、ホットミルク。これを飲んで休め」
「ん…」
北斗に渡されたホットミルクを飲むとさらに眠気が襲ってしまった。