第2章 第二章 未完成な音色
「何があったのか話して」
「嫌」
少し落ち着いてから、万理は私に岡崎芸能事務所を辞めることになった理由を話せと言うが私は拒否した。
「他所の事務所の事情をペラペラ話せるわけないでしょ」
「岡崎芸能事務所の事を話せと言っているんじゃないよ。辞めざる得ない状況になった理由を聞いているだよ」
どっちも同じようなものじゃない!
こういうのを屁理屈と言うんだからね!
絶対に話すもんですか!
「教えてやればいいだろ?星影プロの重役に脅されたってな」
「星影に来なければ千を無理矢理にでも移籍させる。そんでお前の担当するアイドルを潰すと脅されたとね?」
「は?」
聞き慣れた声が聞こえ振り向くと、何故か昴と北斗がいる。
「勝手に邪魔させてもらうぜ万理君」
「久しぶりだね、今は小鳥遊芸能事務所の大神さんと呼ぶべきか?」
「えっ‥は?何で昴さんと北斗さんが」
万理は驚いていた。
何せこの二人とは現役時代から顔見知りで万理が千の相方であることを知っていた人物。
でも万理の居場所は知らなかったようだけど。
もしかして知っていたの?
「俺達が君の存在を知ったのは、失踪してしばらくした後のことだ…顔の広い音晴に頼んだんだよ」
「君のことだから、犯罪者の様に身を隠そうとすると思ってね。なんなら事務所を作ると言っていた彼に任せるのが適任だと思ったんだ」
二人は最初から万理の居場所を特定していた。
私が探していることを知っていても言わなかったのは万理の為を思っての事だったんだ。
「俺も、一度は音楽から離れ身だからな。痛いほど解った」
「ごめんね、詩…教えて上げられなくて」
二人を責めようとも思わない。
私も途中から万理を探すのを辞めたんだもの。
「二人が謝る必要はないよ…勝手に探していた私が馬鹿だったの」
万理を連れ戻したいんじゃない。
ただ無事かどうか知りたかっただけなのに、二人はお見通しだった。
「お前は万理君を連れ戻したかったわけじゃないだろ?ただ元気かどうか確認したかった」
「そしてもう大丈夫だよと言いたかっただけだろう?あの白い悪魔は別だろけど」
本当に何もかもお見通しなんだね。