第1章 第一章 消えた天才作詞家
やらかしてしまった。
プロとしてあるまじき行為をして、マネージャーにも緑ママにもう迷惑をかけた。
「詩音ちゃん、今日は上がっていいわ」
「でも…」
「本当にしょうがいない人ね?音晴ちゃんには私が厳しく言っておいてあげるわから」
「明日からバリバリ働いてもらうからな」
緑ママとマネージャーはそれ以上追求しなかった。
「今日はゆっくり休みなさい。それからこれ」
「え?」
「以前貴方が使っていたアトリエ…住む場所がないなら使いなさい」
私が正式に岡崎芸能事務所に行く時に緑ママに預けたんだっけ?
もう処分していると思ったのに。
「何時か帰ってきた時に必要になると思って残しておいたの…あんなことがあったんじゃ帰りにくいでしょ?彼の所は」
「彼じゃないです」
「そうだったの?てっきり」
万理の所に居座っているのは会話の流れで気づかれているし、万理がバンであることも気づいているだろうし。
「ごめんなさい緑ママ…ホステス失格です」
「そうね…でも、ホステスだって人間よ?」
女優になり切れなかった私を緑ママは責めなかった。
私が後悔しているのを知っているから。
「詩音ちゃんは変わらないわね。昔のまま…それが嬉しいわ」
「そうだぞ詩音!お前は夜蝶としての仕事がある!この歳、お水の花道を極めたらどうだ?バイトといわず本業に!」
「マネージャー…」
気持ちはすごくありがたいけど、期間限定で働かせてもらう約束だった。
「ダメよ銀、この子は渡り鳥なんだから」
「むっ‥オーナー」
何処にも居場所が無い私をここ前必要としてくれる場所があるなら。
とても幸せなことかもしれない。
「でも、私は大歓迎よ?」
「はい、緑ママ」
ただ、地に足をつける場所が未だに見つからなかった。