第1章 第一章 消えた天才作詞家

その後緑ママは他のお客様の挨拶に向かい、私は引き続き接客をする羽目になったけど。


正直気が重い。
早く帰って欲しいけど、一向に帰る気配はない。

「詩音」

「でございます。大神様」

「えっ‥」

何その顔。
気持ち悪いって言いたいの？

「万理君、ここでは本名で呼ぶのはダメなんだよ。ちゃんとホステスさんの名前を呼ばないと」

「そうなんですか」

音晴さんがルールを教える。
緑ママと知り合いってこともあるけど、随分詳しいな。

「ちゃん。君にお願いがあるんだ」

「断りします」

「早っ！」

音晴さんが真剣な表情になって私にお願いをするも即座に却下する。

「どうせろくなお願いじゃないのは経験上解ってます。よって却下です」

「そう言わずに。実は今、新しいプロジェクトを考えているんだ。そこで君に彼等を導いて欲しい」

やっぱりろくな話じゃない！
絶対却下だ！

「お酒追加しますね」

「あの、ちゃん？」

「お酒追加に、フルーツ盛り合わせ！」

ウェイターに注文の追加を言うと冷や汗を流す。

「アルコールが低いようなので、もう少し強めにしますね」

「えっ…これで十分」

「冗談がお好きですのね、小鳥遊様」

ここで大人しく頷くと思うなよ。

「外での同伴は別料金になりますので」

「同伴…」

「ええ、私はホステスですから」


遠回しに私に仕事を頼みたかったらそれ相応の報酬をしろと言った。

「ちなみにホステスの同伴の料金表でございます」

「ちょっ…一時間にこんなに？」

「妥当な金額ですわ。それから追加料金に交通費に食事代を加算しますと…」

「待って、そんなお金ないよ」

「あら残念ですわ」

フッ、まだまだ小さな事務所なら外から雇うのは難しいはず。

だから私に頼みたかったんだろうけど。
私を舐めるなよ？

「ホステスの同伴を望むのであれば、この程度は必要ですわ」

「ちゃん…」

どうあがいても私を雇うなんて無理だ。

これで諦めるがいい。

「そうか残念だね。実は北斗君と昴君から連絡を貰っているんだけど」

「は？」

「君を探しているようなんだけど…話していい？」

この男！
私を脅迫する気か！