第1章 第一章 消えた天才作詞家
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
仕事に集中できない。
いや、今は仕事に集中、集中。
「万理さん、コピー何枚取る気ですか」
「え?」
大和君に声をかけられ我に返ると。
ピー!
「わぁぁあ!」
紙の山が床に落ちる。
「大丈夫ですか万理さん!」
「すいません、紡さん」
何十枚もコピーを取ってしまった。
しかも少しズレているので使い物にならなかった。
「万理さん、今日は体調が悪そうですが…大丈夫ですか?」
「朝から、注意力散漫で…具合が悪いなら後は俺がアイツ等の事を見てますよ」
しっかり者で一番の年長者の大和君に気遣われるも、俺は平常心を保つ。
何をやっているんだ。
所属タレントに心配をかけるなんて。
「大丈夫だよ。心配しないで」
「でも、万理さんは私のフォローまでしていただいていますし」
「これも仕事ですから」
紡さんにまで心配をかけるわけには行かない。
しっかりしなくちゃいけない。
そう思っていたけど、仕事に集中できない!
「あれぇ?何でいるのぉ?」
「お前な!」
「えへへ」
心配で仕方なかった俺は仕事が終わるまで店の近くで待機していた。
勿論車の中でだ。
もう日付が変わっているけど、心配で眠れなかった。
「お酒の匂い…」
「らってぇ、お酒飲むの仕事なんだから!アハハ!」
「この酔っ払い」
ベロンベロンに酔っぱらっている。
迎えに来て正解だな、このまま一人で帰るなんて危険すぎる。
いや、お持ち帰りされないでいたのが奇跡じゃないか?
「アハハ、怖い顔しちゃって!どうしたの?」
「誰の所為だ、誰の…」
「うーん、眠い」
「こら!道端で寝るんじゃない」
酔っ払いに言っても聞くはずはなく、結局そのまま爆睡してしまった。
「うー…」
「まったく」
やっぱり、水商売は無理じゃないか?
早めに止めさせた方がいいし。
向いていないじゃないかと思った俺は社長に相談しようと思った。