第1章 第一章 消えた天才作詞家
その日、万理に三時間に渡るお説教を受けた。
「いい?俺が帰るまでお都内しているんだよ?誰が来ても部屋に上げちゃダメ、それから戸締りをしっかりして…」
「私は子供か!」
「似たようなものだろ」
ネチネチ煩い万理は早く出ないと遅刻するのに未だに私にお説教をする。
「いい?ちゃんと留守番をしているんだよ」
「はーい」
しつこいまでに子供に言って聞かせるようにして万理はようやく出て行った。
「よし!」
万理の姿が完全に見えなくなるのを確認して私は作業に入る。
「えっとパスワード…五年前から変わってなくてラッキー」
思った通り!
「よし、これで作家活動ができる!」
できるだけ早く就職活動をしたいけど。
荷物は最低限しか無し、事務所にホテルに置いてる荷物は処分してもらう様に手配をした。
だから、手短に稼ぐ方法となれば動画サイトやブログにラノベが手っ取り早い。
「本当にいい時代だわ」
その昔だったら、こんな稼ぎ方はできなかった。
今では趣味で稼ぐ方法はいくらでもあるから大助かりだ。
「えっと、報酬がネットマネーになる方がいいよね」
万理に詮索された面倒だし。
「後は地道に内職でもするか」
ネット通販で裁縫セットを購入して、グッズを作る。
五年間貧乏生活まっしぐらでワーキング生活をしていた私は多くの技術を習得した。
「芸は身を助ける…まさにその通りだわ!」
今までしてきたことは全て無駄にならなかった。
「ノートパソコンが欲しいな」
万理が仕事に出ている時だけでは心持たないから、ネットで安く仕入れよう。
「ただいま」
「お帰り」
「大人しくしていた?」
「うんしてた」
定時で帰って来た万理は私が大人しくしていたことを怪しんでいる。
「怪しい」
「失礼な。ちゃんと部屋にいたし」
アパートから一歩も出てないのに、この言い草はないだろう。
これは、しばらく外に出られなさそうだな。