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流星の絆

第1章 第一章 消えた天才作詞家


❁❁❁ 万理side ❁❁❁

俺は頭を抱えたくなった。

五年過ぎても全く変わってない。

いや、さらに自由になっている気がする。

「お前、音楽辞める気か!」

「まぁ、それもいいかなって」

「いい訳あるか!」

俺は知っているんだ。
詩音程音楽を愛している人間はいない。

才能も有るけどそれに見合うだけの努力は十分すぎる程している。

なのに、作曲はせずに作詞をしている。
本人曰く、歌うよりも作詞の方が性に合っていると言っていたけど。

それでも音楽に関わっているならいいかと思った。

インディーズの頃、音響や、演出は詩音が全て担当してくれたおかげで、素人でありながらも大人達と対等に渡り合えていた。

詩音にはプロデューサーとしての才能もあるからだ。

努力もして、才能もあるのに…

なのに辞めてしまうなんて。

「どうして…」

「私は、既に音楽から離れた身よ。でも、千と万理に出会って…もう少し音楽をしてもいいかと思った」

「じゃあ!」

「でも、Re:valeは軌道に乗ったし。何より作詞だけで良かったの」

何時からだろう。

詩音が作曲をしなくなったのは。

何時からだろう。

詩音が歌わなくなったのは。


何が理由なのか聞いても、作曲は千がした方が良いと言って教えてくれない。

ステージで一緒に歌おうと言っても裏方が好きだと言うばかりで何も言ってくれない。


時折詩音は万華鏡のように心根が掴めなかった。


「別に音楽が嫌いになったわけじゃない。音楽を仕事として辞めるだけ」

「そんなの同じじゃないか」

「貴方だって似たようなモノでしょ」

「あっ…」

俺は自分の事を棚に上げて、酷いことを。

「詩音ちゃん、少し意地が悪いね」

「自分の事を棚に上げて言うからよ。まぁ、少し意地悪だったとは思うけど」

冗談ぽく言う所が変わらない。
普通ならもっと怒ってもいいはずなのに。

勝手に決めるな!って責めてくれた方がいいのに。


昔から突き放すようなことを言っても、最終は手を差し伸べてくれて…

逃げ場を用意してくれる。

詩音は優し過ぎた。

そんな彼女に随分と負担を強いてしまったのかもしれない。


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