第2章 出会い
「じゃあやっぱり、あの変なヤツは葵が倒してくれたんだね!」
「うん」
「ねぇ、あれってなんなの?」
「……呪霊。人の悪い気持ちからできる呪いだよ」
「葵はあれをやっつけられるの?」
「うん。あたしの家族はみんなできる」
「すっげぇぇええ!!」
もさもさと菓子を貪りながら、葵は灰原の質問に淡々と答えていく。
灰原はキラキラと目を輝かせてしきりに「すごいなぁ!」を連発している。褒められて悪い気はしない。
葵は少し頬を赤くして、指についた塩っけを舐めとった。
「でねでね、そんとき結衣が――」
「葵様!!」
灰原の話に思わず葵が笑ったとき、公園に女性の金切り声が響いた。途端に葵の顔から笑顔がなくなる。
灰原はきょとんとした顔で振り返った。
「葵の知り合い? おかあさん?」
「…………ううん。家のお手伝いさん」
「葵様、こんなところでいったいなにを……!」
真っ青な顔色をした侍女は息を荒らげながら葵と灰原に近づいた。咄嗟に葵は地面に置いていた菓子類を侍女の目に見せないように前へ踏み出した。
「葵?」
「話をしていただけだ。ここは家からそう遠くない」
「遠い近いの問題ではありません! あなた様が護衛もつけずに外にいるということがいけないのです!」
葵はぶぅ、と頬をふくらませて灰原を振り返った。
灰原の目は不安そうに泳いでいた。
怒られていると思ってしまったらしい。
「ごめん、雄。また今度ね」
「う、うん。またね、葵」
にこっ、と口角をあげ、葵は灰原に手を振った。それに手を振り返しながら、灰原は眉を下げる。
「葵!」