第2章 出会い
肩で切り揃えられた青髪。
伏し目がちな紺碧の瞳。
綺麗に着飾った着物。
まるで人形のように美しい横顔の少女はキィ、と軋むブランコに乗っていた。
「葵!」
名前を呼ぶと、葵は伏せていた目をあげた。
宝石のように輝く瞳に自分の姿が映り込む。
灰原はにこにこと笑いながら葵に駆け寄った。
「雄」
「結衣も来たいって言ってたんだけどね、ほっぽって来たんだ! でね、おかあさんが葵といっしょに食べなさいって!」
来て早々早口にまくしたてる灰原に葵はぽかん、と口を開ける。
灰原は背負っていたカバンを前に出し、ジッパーを開けた。
がさごそと漁り、様々なスナック菓子やチョコ菓子が出てきた。名前は知っていたが、食べたことのないものばかりだ。
「どれがすき? ぼくはじゃがりこのチーズ味!」
「……あたし、ぜんぶ食べたことない」
「えぇっ!? めっちゃくちゃおいしいよ!」
素直に伝えると、灰原は心底驚いたように目を見開いた。
しかしすぐににっこり笑うと、じゃがりこの蓋を開けた。
長細いそれを一本取り出し、「ん」と葵に差し出す。それを受け取った葵は無言でそれを眺める。
「口の中に突き刺さるから、気をつけてね」
サクサクと小気味のよい音を立てながら灰原はじゃがりこを口に放り込んだ。
それを真似て葵もじゃがりこを食べる。
「…………おいしい」
ほのかな塩味が口の中に広がり、癖になる美味しさだ。
「だろ!? もっと食べていいよ!」
今度はチョコ菓子。
次はポテトチップス。
次にマカデミアナッツ。
昨日の勢いのまま来てしまった葵はなにを話そうかと悩んでいたが、意外にも灰原との会話は弾む。
とてもおいしい菓子とともに。