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空谷の跫音〈呪術廻戦/七海建人〉

第2章 出会い



 うなだれ、歩いていく背中に灰原は声をかけた。途中で葵の歩みは止まる。
 不思議そうに灰原を見た。


「ぼくたち、友だちだから! 友だちはね、どんなに遠いところにいてもすぐ会えるんだよ!」


 手を引かれ、連れていかれる葵の後ろ姿を見ていると、もう二度と会えないような気がした。

 だから、そう声を張り上げた。

 まだ出会って二日しか経っていない。
 たくさん話をしたのだって今日が初めてだ。

 でも、会ったときから思ってたんだ。


「ははっ、なにそれ」


 面白そうに、葵の目が細められる。


「そうだね。きっとすぐに会えるよ」


 彼女はさびしいんだって。
 だれかと話したいんだろうなって。
 それで、とっても優しいんだろうって。

 綺麗な着物を着た、人形のような女の子はカラン、コロン、と下駄の音を鳴らしていなくなってしまった。































 友だち。

 初めての、友だち。

 へにゃり、と葵は顔を緩めた。
 あのとき呪霊を祓って本当に良かった。

 昨日感じた罪悪感はいつの間にかなくなっていて。綺麗に消えていて。

 次にその罪悪感が現れるのは。


「………………雄」


 もし、あのときあたしが呪霊を祓っていなければ。
 もし、あのときあたしが公園にいなければ。
 そもそも、関わってすらいなければ。


「……ごめ、ん、なさい」


 彼は、今もどこかで元気に笑っていただろうか。



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