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空谷の跫音〈呪術廻戦/七海建人〉

第3章 東京都立呪術高等専門学校



「一年担任の佐伯かなえだ。よろしく頼むよ」


 黒髪のショートカット。
 すらりとした体躯。
 丸メガネ。

 穏やかに微笑むその女性は、緊張した面持ちで立つ葵と灰原に手を差し出した。


「冷泉葵です。よろしくお願いします。佐伯先生」

「灰原雄です! よろしくお願いします!」


 二人はそれぞれ佐伯の手を握り、一通りの挨拶を終える。

 灰原がふと辺りを見渡し、なにか疑問があったのか口を開いた。


「あの、先生。一年って三人いると聞いてたのですが」

「ん? あぁ。三人目はもう教室に――」

「オマエが冷泉?」


 佐伯の言葉を遮るように聞こえてきた声。
 どこか嘲るような口調で、葵の名を呼ぶ声。

 葵は佐伯の奥を見た。


「葵、知り合い?」

「……いや」

「悟。何の用だ?」


 答えたのは佐伯だった。

 気だるそうに校舎の中から出てきた男は、日本人にしては珍しすぎる白髪にサングラスをかけていた。その上背が高すぎる。
 目を引く格好だ。


「今年の一年に冷泉家のご息女様がいるって聞いて、見に来ただけだけど……」


 その男はかけていたサングラスを上にずらし、飲み込まれそうなほど輝く青い瞳で葵を見下ろした。

 圧に葵は顔を強ばらせる。
 それは隣の灰原も同じだったのか、ごくっと唾を飲み込んでいた。

 男の目を葵も睨み返す。


「なんだ、思ったより弱っちそうじゃん」


 期待して損した。

 そう、男は言い放った。


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