第27章 思惑絡むコンチェルト【起首雷同】
「でも、行ってみるしかないわよ」
「うん」
「そっスね」
釘崎の言葉に、順平と新田が頷いた。
学校の駐車場まで揃って行くと、武田も見送りに来てくれる。
そこへ、武田が「伏黒君」と呼び止めてきた。
「津美紀君は元気か?」
ビクッと一瞬 身体がこわばったことには、誰も気づかなかっただろう。
けれど、詞織は動揺から微かに震えていた。安心させるように彼女の肩を抱き、少しだけ武田へ視線を向ける。
「……はい」
良かったと言って去って行く武田の後ろ姿をしばらく見つめ、伏黒は詞織へ先に乗るように促した。
「ツミキって誰?」
「……姉貴」
虎杖に短く答えると、釘崎が「はぁ⁉」と半ギレの声を上げた。
「伏黒くん、お姉さんがいたんだ」
「アンタ、自分の話しなさすぎじゃない⁉」
聞かれなかったから答えなかっただけである。
ギャンギャンと喚く釘崎に無言を貫いていると、詞織の様子がおかしいことに気づいた。おそらく、“当時”のことを思い出したのだろう。
自分の肩にもたれかけさせ、彼女の滑らかな長い髪に触れ、優しく撫でる。
ゆっくりと深呼吸をする詞織に、伏黒の少しざわついた心も次第に冷静さを取り戻していった。
* * *