第27章 思惑絡むコンチェルト【起首雷同】
「姉さまが言ってた。心は熱く理想を追いかけて、頭はどこまでも冷静に現実を見極めてって」
理想を追いかけることで人を助け、現実を見極めることで己の技量の限界を測る。
人を助けることと自分が死なないことは、必ずしも両立できない。それを測り間違えれば、人を助けることもできず、最悪 自分も命を落とすことになる。
それで苦しんで呪術師を辞める人もいれば、死ぬ人もいる。
「ジュンペー。初めての任務で冷静にって難しいかもしれない。でも、死にたくないなら忘れちゃダメ。恐怖や焦りが事態を良くすることなんてないから」
後ろの座席の詞織の言葉に、伏黒が「そうだな」と相槌を打つ。
一つの判断ミスが死に繋がる世界。
心は熱く理想を追いかけて、頭はどこまでも冷静に現実を見極めて。
「うん、分かった。ありがとう、神ノ原さん」
楽しいだけの世界じゃないことは分かっている。
すでに三人が死んだ案件をこれから調べるのだから。
流れる景色を車窓から見送りながら、順平は緊張からバクバクと鳴る心臓を少しずつ宥めた。
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