第24章 パッションの爪痕【完遂~呪術甲子園】
「あぁっ! ……ぐ、ぁ、あぁ、う、うぅ――……ッ‼︎」
真っ暗な闇の中で、悲鳴のような呻き声が周囲に浮かぶシャボン玉のようなものを震わせていた。
双子の月が闇を照らし出す、高い楼閣の真下。
枝垂れ桜を映す汀に、赤と黒のゴシックロリータのスカートを浸し、一人の少女が蹲っている。
「……詩音……っ!」
詞織は双子の姉に駆け寄り、肩に触れる――と、バチッと火花が爆ぜた。
「ぅあッ⁉︎」
一際 高い詩音の悲鳴に、詞織は慌てて手を引いた。
「……詞織……」
「ご、ごめんなさい……詩音……わたしのせいで、こんな……っ!」
申し訳なさで、声が尻すぼみに小さくなっていく。
自分が弱いせいで……詩音に無理をさせた。
垂水との戦いでも詩音に頼り、その浅はかさのせいで、詩音は“縛り”を破る羽目になってしまった。
詩音が苦しんでいるのは、“縛り”を破った反動。
自分のせいだ。
すると、詩音が詞織の首に抱きつき、バチバチッとけたたましい音を立てて火花が爆ぜる。
「うぁあ、あぁッ! あぁあぁ――……ッ‼︎」
「詩音ッ! 詩音ッ!」
詞織に痛みはない。
痛むのは詩音だけ。
「詩音、離して!」
「イヤッ! 詞織……ッ!」
離れようとする詞織の身体を、詩音は縋るようにして抱きしめる。