第24章 パッションの爪痕【完遂~呪術甲子園】
「ほんと、【陰陽術式】ってすごいよね。汎用性の高さだけなら僕も負けちゃうなぁ。汎用性の高さ “だけ” はね~」
だけは、ってめちゃくちゃ強調するな、この人。
「あぁ、詞織に憑いてる特級過呪怨霊の詩音も【陰陽術式】が使えたな。反動でしばらく表に出てこられないみたいだけど、回復したらやってもらおうか。詞織が頼めばいくらでもやってくれるでしょ」
「悟、そこまでにしておけ」
夜蛾の言葉に、五条は肩を竦めて引き下がる。
「そもそも、なんで呪霊や部外者が天元様の結界を抜けられたのよ」
歌姫の疑問はもっともだ。それに答えたのは五条だった。
「それは、生徒たちが相手にした特級呪霊のせいだと思う」
彼によれば、あの呪霊は特殊な気配を持っているらしい。
呪霊は呪霊でも、限りなく精霊に近いだろうとのことだ。東堂の話だと、植物に潜り込むこともできた。
「天元様の結界も、植物には機能しないでしょ。天元様の結界って、“守る”より“隠す”に全振りしてるから。懐に入られるとちょっと弱いよね」
そこまで話して、不意に五条は黙り込む。珍しく真面目に考え込んでいるようだ。何か引っかかりを感じているのか。
「とりあえず今は、学生の無事を喜びましょう」
パチンッと歌姫が手を打って明るく言う。
「だが、交流会は言わずもがな、中止ですね」
「フム……」
夜蛾に楽巌寺が相槌を打った。
まぁ、こんなことになってしまっては仕方がない。生徒たちも交流会どころではないだろう。
それは、ここにいる全員が思っていたことで――……。
「ちょっと、それは僕たちが決めることじゃないでしょ」
ここにいる、五条以外の全員が、交流会は中止だと思っていたのだが……。
やれやれと嘆息する五条に、一同は揃って首を傾げた。
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