第24章 パッションの爪痕【完遂~呪術甲子園】
「続いて、人的被害です」
本部の和室に、学長を含めた教師陣が集まっていた。
学長の夜蛾と楽巌寺、教師の五条と歌姫、一級呪術師の冥冥。彼らの前で、補助監督の伊地知は被害報告を続ける。
二級呪術師三名、準一級呪術師一名、補助監督五名、忌庫(きこ)番二名。
高専に待機していた術師で、五条や夜蛾と別行動だった者たちだ。
家入からの報告待ちだが、以前 神ノ原 星也が遭遇したツギハギ顔の呪霊の仕業でほぼ間違いないだろう。
低く舌打ちをする五条に、伊地知は思わずビクッと身構えた。
「この件って、学生や他の術師と共有した方がいいですかね?」
歌姫の言葉に、楽巌寺は「いや」と首を振る。それに夜蛾も「そうだな」と肯定して続けた。
「上で留めておいてもらった方がいいだろう。呪詛師界隈に特級呪物流出の確信を与えたくない。捕えた呪詛師は何か吐いたか?」
「口が堅いわけではないのですが、まともじゃない、要領を得ない発言が多いです」
件(くだん)の襲撃に関しても、自分は取引きの上、命令されてやったに過ぎないとのことだ。
――『ハンガーラックを作りたかったんだ。それをあの坊主……名前は知らねぇ――男か女かも分かんねぇ。白髪オカッパのガキだ』
「性別不詳のオカッパ坊主のガキんちょ。心当たりは?」
冥冥の問いに五条は「なーし」と軽く返す。
「適当こいてるだけじゃない? 自白に強い術師いないの? そうだ、星也か星良を呼ぼうよ。アイツらの術式なら自白も簡単でしょ」
確かに、星也の【陰陽術式】の言霊は狗巻 棘が使っている【呪言】と同じ効果を持つ。
相手も呪詛師だが、彼は特級術師。自白させるのは簡単だろう。
星良の【書字具現術】も、相手を従わせることが可能だ。