第24章 パッションの爪痕【完遂~呪術甲子園】
夏油の作戦はこうだ。
以前、吉野 順平と関わった騒動で、高専に【宿儺の指】を回収させた。
あれには、真人の呪力で作った札を貼っておいたのだ。一層の封印の内側だからまず剥がれることはないし、強い呪物だから真人の気配も紛れる。
そして、真人なら自分の呪力を簡単に辿れるから、それを追って高専の所有する特級呪物を回収する。
扉から蔵までの間に天元の側近が二人いるが、ほとんど一般人と変わらない強さの雑魚だった。手応えも何もない。
夏油の真人への指示は、「【帳】が下りきる前に、術師をできるだけ静かに間引き、花御の負担を減らせ」というものもあったが、こちらも楽勝である。
五条 悟を【帳】の内側に閉じ込めた方がいいのではないかという意見も出たが、本命の真人の任務に意識を向けさせたくないという回答が返ってきた。
それに、ある程度 全力を出してもらわないと、【帳】のテストにもならない。学生を閉じ込めるのが手っ取り早いとのことだ。
【宿儺の器】以外は殺しても構わない――はずだったが、これに関しては、夏油がやや難色を示した。
宿儺の動きが、夏油のイメージと少しズレているらしい。
推測の域を出ないが、おそらく高専関係者の中に、宿儺にとっての地雷がいる。
それを踏めば、最悪 今回の行動、全てが台無しであると語った。
どの道 使う駒なのだから、虎杖だけ攫えばいいと言われるも、「虎杖も宿儺自身もまた爆弾だ」と棄却された。
爆弾であることは、自分たちにとっても高専にとっても同じだが。刺激するなら、タイミングはより混乱が求められる時にしたい。
――十月三十一日、渋谷。
五条悟の封印のために、できるものは温存する。