第24章 パッションの爪痕【完遂~呪術甲子園】
薄暗い鍾乳洞――身体を半分吹き飛ばされ、息も絶え絶えで倒れた花御に、一人の青年が刀を向けていた。
それに気づいた真人はゆったりとした足取りで近づき、彼の肩に腕を回す。
『人間のくせに勝手すんなよ。殺すぞ』
「嫌だなぁ、優しさじゃんか。【呪い】にこの機微は分かんないな」
彼――重面 春太はニヤついた顔でこちらを見てきたが、すぐにパッと両手を上げて刀を下げた。
「で、ブツは?」
『バッチリさ』
真人が人間の指のミイラを見せる。
特級呪物【両面宿儺】――高専保有分六本。
同じく特級呪物【呪胎九相図(じゅたいくそうず)】―― 一番から三番。
この作戦は、夏油 傑の指示だ。
高専にある寺社仏閣、そのほとんどがハリボテで、天元と呼ばれる不死の術式を持った術師の張る結界によって日々配置を変える。
その中の千を超える扉のうちの一つが、【指】を含む危険度の高い呪物を保管する蔵へと通じているが、その日、どの扉が蔵へ通じているかは天元しか知らない。
天元自身は結界の運用以外で現に干渉することはない。その上、不死ではあるが不老ではないらしく、夏油曰く「ただの木か何かだと思ってくれていい」と言っていた。