第23章 滾る想いのコン・アニマ【黒閃~規格外】
「ラック! ラック‼」
あまりの狂気にヒッと思わず悲鳴が漏れたが、スッと五条の背中が視界を塞いでくれた。
見上げれば、ニヤリと彼の口角が上がったのが分かる。
「殺すな‼︎」
楽巌寺の叫び声が響く――と、呪詛師の四肢が弾け、グシャッと潰れた。
呪詛師は悲鳴を上げることもできない。
自分の身体に何が起こったのか、理解できていないのかもしれない。
「え……何が……」
「コイツには色々と聞かないといけない。死なせちゃダメだよ。ほら、手当てして」
舐めきった発言と態度に、さすがの楽巌寺も苛立たしげに青筋を立てる。
けれど、ようやく痛みが追いついたのか、悲鳴を上げながら暴れる呪詛師を、楽巌寺は「黙れ」と八つ当たり気味に怒鳴りつける。
そんな彼らをまるっと無視して、五条はぐるりと宙を仰いだ。
「……歌姫のところにいた呪詛師の気配が消えた。逃げの算段はつけてるわけか。残るは悠仁たちと戦っていた特級。前に遭遇したけど、気配を消して逃げるのが上手かったな。悠仁のところまで距離もある」
ボソボソと小さく呟く声は、自分にしか聞こえなかったことだろう。
「――仕方ない。少し、乱暴しようか」
そう言った五条の顔は、どこか楽しそうだった。
「順平、二〜三歩 下がって。あと、【澱月】を出して、その後ろに」
「は、はいっ!」
何が起きるのか分からないが、順平は五条の指示に従う。
危ないことでもするのだろうか。
【澱月】の滑らかな身体なら、多少の衝撃は緩和できるだろうが。