第23章 滾る想いのコン・アニマ【黒閃~規格外】
「難しいこと言うじゃん。ま、ボクより弱くても一応 先生だから、言いつけは守らないとね」
五条と同じで、いちいち癇に障る男だな。
「え、もしかしてこの人、ヤバい感じ?」
「腐っても一級。東堂先輩の行動と迫力に隠れがちだけど、実力は本物よ」
ぶわっと殺気と共に垂水の呪力が空気を塗り替えていく。
「もしかして、俺のこと舐めてる?」
不愉快そうに眉を寄せる春太を、垂水は鼻で嗤った。
「当然でしょ。そんなナマクラで“オレ”に勝てると思ってんの? 選ばせてやるよ。一瞬で喰われるか、じわじわいたぶられるか。まぁ、オマエの泣き顔にはそそられないだろうけどな。運が良かったら生きてるだろうさ……!」
水流が鞭のようにしなり、春太へ襲いかかる――そこへ、バシュッという音と共に黒く覆われていた空に晴れ間が覗いた。
「【帳】が上がった⁉︎」
空を見上げて驚愕に歌姫が目を見開いていると、垂水の水の鞭を紙一重で避けた春太が「マジィ⁉︎」と声を上げる。
「三十分も経ってなくない? 逃げよっ!」
いったい何がしたかったのか。
ピューンッと足早に逃げていく後ろ姿に、四人は揃って首を傾げた。
* * *