第23章 滾る想いのコン・アニマ【黒閃~規格外】
楽巌寺を残し、学生の保護を急ぐ歌姫は、西宮と連絡を取っていた。
「了解。西宮もそのまま硝子のとこにいて。大丈夫。三輪はもう硝子のところにいる」
電波が断たれなくてよかった。まぁ、五条 悟を拒む【帳】の効果を考えれば、それ以外を拒絶できないのは当然か。
――「高専に呪詛師……あるいは呪霊と通じている奴がいる」
そう五条は言っていたが、どうやら勘違いではないようだ。
チャラついているように見えて、物事の本質をしっかりと捉えることができるあの男の言うことを信じていなかったわけではないが、信じたくない気持ちも確かにあった。
「…………っ⁉︎」
不意に、背後から殺気を感じ、歌姫は飛び退く。
そこにいたのは、細身の刀を持った小柄な若い男だった。見知らぬ侵入者――十中八九、呪詛師だろう。
「あれっ? 絶対に斬ったと思ったのに。これだから俺は……」
ため息を吐く男の刀に、思わず目がいく。刀の柄が人間の手だ。まるで手を繋ぐように、男は握っている。
その様に、思わずゾッとしてしまう。歌姫の視線に気づき、男――重面(しげも) 春太(はるた)は「いいでしょ、コレ」と微笑んだ。
「鞣造が作ってくれたんだ。オマエは非力だから、刀からも握ってもらえって。さっき会わなかった?」
鞣造……楽巌寺が請け負った禿頭の呪詛師を思い出す。
「ねぇ、お姉さんは俺に何をくれるの?」
「そんな自分のことばっか喋ってるとモテないよ?」
声の方へ視線を向けると、垂水 清貴がゆったりとした足取りでこちらへ歩いてきていた。
後ろには禅院 真依、東京校の釘崎 野薔薇の姿もある。