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夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第23章 滾る想いのコン・アニマ【黒閃~規格外】


 禿頭の呪詛師――組屋 鞣造(じゅうぞう)は、背の低い小柄な老人の呪術師と対峙していた。

 一緒に顔に傷のある巫女服姿の女もいたが、「学生の保護をしろ」と老人が先へ行かせてしまう。

 こんな老人の相手をさせられて、いったい何が面白いのかとため息を吐くと、彼は背負っていたケースを投げ捨て、中に入れていたエレキギターをおもむろに構えた。

 ギュインッと激しく弦を掻き鳴らすと、音が衝撃波となって地面を奔り、襲ってくる。

「なっ……⁉︎」

 自身をアンプにして、奏でた旋律を増幅させ、呪力として打ち出したのか。

「面白ぇ。財布を作ろう。加齢臭たっぷりのな」

 皮肉を混ぜて嗤い、鞣造は楽巌寺へ距離を詰める。
 しかし、ギターを掻き鳴らすごとに打ち出される呪力の衝撃波によって、近寄らせてもらえない。

 枯れ果てた老人とはいえ、現役の術師ということか。

 距離を詰められると不利な、中距離タイプ。
 近接戦に持っていけば、皮を剥いで財布にしてやれるのに。

 不意に、バシュッと音を立てて【帳】が上がる。

 何でとか、どうしてとか、誰がとか。

 そんな考えが浮かばないくらい、【帳】を破った人物は一人しか思い当たらない。

「おいおいおいおい。イカしたハンガーラックが目に浮かぶぜ」

 上空を見上げ、鞣造は思わず口角を上げてニヤけるのを止められなかった。

* * *

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