第23章 滾る想いのコン・アニマ【黒閃~規格外】
左腕を出し、花御が本格的に戦闘態勢に入る。
樹木の波で押し流そうとしてくるが、それを足場に虎杖は東堂と花御の顔面に掌底を決める。
今日 初めて会ったばかりだというのに、虎杖と東堂はぴったりと呼吸を合わせることができていた。
さらに、東堂の術式――【不義遊戯(ブギウギ)】。
手を鳴らす合図と共に、一定以上の呪力を持つ人・物の位置を入れ替える。
詳しい説明の時間もなかったが、「止まるな」「俺を信じろ」というたった二つに、虎杖は躊躇うことなく頷き、東堂の術式に合わせた。
そして、放たれる――【黒閃】。
狙って発動できる術師はいない。
けれど、まぐれでも実力でも、一度目の【黒閃】を決めると、術師は一時的にゾーンに入り、意図的に行なっている呪力操作が呼吸のように自然に廻る。
【黒閃】連続発生記録保持者の一級呪術師――七海 建人は四回。
その回数を超え、虎杖は五度目の【黒閃】を花御に打ちつけた。
五度の【黒閃】と二人の連携に追い詰められていくも、花御は初めて戦いに高揚感を覚えた。
二人でなら、祓える……!
そう、虎杖と東堂は確信していた。
そのとき――周囲の木々がしおれ、花御に呪力が集まっていく。
『《……できることなら使いたくはなかった》』
その左腕の膨らんだ付け根にギョロリと目が蠢く。
「東堂‼︎」
「来るな、ブラザー! とんでもない呪力出力だ‼︎」
東堂の【不義遊戯】を使えば躱せる。それを見越し、花御は印を結んだ。
『《【領域展――……】》』
しかし、それが完成するより早く、バシュッと音を立て、黒い空間が解き放たれる。
「【帳】が‼︎」
上空を見上げると、そこには目隠しを外した五条と戸惑った表情の順平が佇んでいた。
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