第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
「お前、あいつを止めろ」
『命令しないで! 【縛鎖(ばくさ)】!』
そう言いつつも、詩音が言霊を放つ。黒い鎖がジャラリと音を立てて呪霊を拘束した。
『長くは保たないわ!』
「充分!」
真希が伏黒へ手を差し出すと、それに応じて伏黒は影から赤い三節棍を取り出す。鮮やかな手並みで真希は三節棍――特級呪具【游雲(ゆううん)】を操り出した。
ビュンビュンとしなる游雲を、真希が呪霊に叩き込む。
――ドォオォォオォン!
游雲を打ち込まれた衝撃で、呪霊が森を抉りながら弾け飛んだ。
『は……? あ、あなた……本当に人間? 特級呪具を使ってるからって……ありえない……』
「何言ってんだ。人間だから呪術師やってんだろ」
軽い調子で言う真希に、詩音は『はは……』と乾いた声で笑った。
「おい、大丈夫か?」
詩音を気遣う日が来るとは思わなかったが、彼女が使っているのは詞織の身体だ。
小さな肩に触れると、詩音がその手をパンッと弾く。
『気安く、触らないで……もう、無理……長く出過ぎたから、反動が……しばらく表には出て来られない……』
呻くように言う詩音に、伏黒は小さく息を吐いた。
「ありがとう」
ポツリと、独り言かと思うほど小さな声だったが、詩音には聞こえたようで、少女は赤い目を丸くする。
『伏黒 恵。あたしが表に出られない間は、とっても不本意だけど、詞織のことを任せるわ。世界で二番目……あたしの次に、この世で詞織を愛しているあなたにね。かすり傷一つでもつけたら許さないから』
交流会もあるからかすり傷くらいは大目に見てほしいのだが。
それでも、詩音が自分を認めてくれているという事実は、素直に誇らしかった。