第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
「【 動 く な 】」
ガチッと呪霊の身体が固まった。三人は一斉に距離を取る。
加茂は懐から血液パックを取り出し、手早く封を開けた。
――【赤血操術(せっけつそうじゅつ)――苅祓(かりばらい)】
チャクラムのように作り変えた赤い血液を投げつける。
高速回転した円形の刃が呪霊の頭に命中する。しかし、呪霊はピクリとも動かない。攻撃が通らなかったのだ。
その頭上へ、鵺が襲い掛かった。バチバチッと帯電する鵺に気を取られた隙に、伏黒は影から黒い刃を持つ刀の呪具を取り出した。
一ヶ月ほど前、二年に特訓をつけてもらっているとき――己の影に物を収納できることを知って、伏黒の影は真希の呪具の収納庫と化した。
全て売り払えば一財産築けるらしいが――考えると色々と恐ろしいので止める。
刀を構え、伏黒は呪霊の足へ斬りつける。だが、手応えは全くない。まるで、岩の表面を軽く撫でた感じだ。
「《やめなさい、愚かな児(こ)らよ》」
舌打ちする伏黒の耳に奇妙な"音"が響いた。
狗巻と加茂にも聞こえたのか、動きが固まる。
「なんだ、これ……気持ち悪ィな!」
耳に届く音は理解不能なのに、頭では意味が理解できるという強烈な違和感。
「《私はただ、この星を守りたいだけだ》」
呪霊の言葉に反応できずにいると、加茂が「耳を貸すな」と助言してきた。
「呪霊の戯言(たわごと)だ」
「そう切り捨てたいのは山々ですけど、低級呪霊の戯言(たわごと)とはレベルが違いますよ」
耳では理解不能なのに頭では理解できる。
つまり、独自の言語体系を確立してるということだ。