第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
回避行動を取る呪言の強制力が解除され、樹木の方を見る。
そこには、成人男性よりも一回りか二回りは大きな身体を持つ呪霊が屋根から降り立った。
眼窩から太い枝が伸び、歯茎を剥き出した顔。
左腕はなく、肩部分には大きな膨らみがある。手足はすらりと長く、しなやかな体つきは人間に近い。
「なぜ高専に呪霊がいる? 帳も誰のものだ?」
「多分、その呪霊と組んでる呪詛師のものです」
加茂に答える伏黒の隣では、呪言の負荷から狗巻が「ゲホッ」と咳を込んだ。
「何か知っているのか?」
「以前、五条先生を襲った特級呪霊だと思います」
尋ねられて、五条から聞いた話を思い出す。
――「コイツら、未登録の特急呪霊! しかも、呪詛師と組んでるっぽいんだよね~」
そう言って、五条は下手クソな絵を見せてきた。子どもの落書きレベルの絵だったが、特徴だけはしっかり掴めているようだ。
「ツナマヨ」
電話を掛けるような狗巻のジェスチャーに、伏黒は「そうですね」と相槌を打った。
「五条先生に連絡します」
「ちょっ……と待て。君は彼が何を言っているのか分かるのか?」
「今はそんなことどうでもいいでしょ」
会話が成立していることに驚く加茂の気持ちも分からなくもない。
だが、今は余計な話をしている暇はないだろう。
相手は特級呪霊。領域展開を使われたら終わりだ。
距離を取って五条のいるところまで後退しなければ――……。
スマホを取り出して五条の番号を呼び出す――と、呪霊が加茂の背後に回った。
ハッと息を呑む間もない。反撃をするべく動いた加茂をすり抜け、呪霊は伏黒へ何かを放ってきた。バキッと不吉な音を立て、スマホが弾かれる。