第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
「……遅かったかな」
そこで、時刻表を背に蹲る女性に気づき、「おい、そこの人!」と呼んで駆け寄る。
「大丈夫か? 他の人たちはどうした?」
膝をついて目線を合わせると、彼女はひどく青ざめた表情で震えていた。
「みんな……化け物に……電車……に、乗って……私は――……満員だッカラ! いらないって‼」
ガタガタと震えていた女性の顔が、グニィィッと不自然に歪んでいく。その光景が、里桜高校で真人に触れられ、目をギョロリと開いた順平の姿と重なった。
変わり果てて倒れた女性を見て、虎杖は奥歯を噛み締める。
「アイツがいたんだ! ……クソッ‼」
そこで、女性の言葉を思い出した。
みんな、化け物に……?
電車に乗って……?
確か、明治神宮前駅を出発した電車が次に向かうのは渋谷。
そこには確か――……。
「五条先生‼」
その声が渋谷まで届くはずもなく、虎杖はただ冷や汗を流すしかなかった。
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