第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
――22:58
首都高速三号 渋谷線 渋谷料金所
「お待たせしました、学長」
星也は拠点ともいうべき場所に到着し、夜蛾と家入に挨拶をした。
「遅かったな。星也。乙骨は?」
「憂太とは別行動でして。もう少ししたら到着するかと」
タバコの煙を吐き出して揶揄うように言う家入に、星也は「すみません」と眉を下げる。
そして、救護室となっているテントの中を覗いた。そこには、大勢の補助監督や術師が治療を受けている。
「被害は?」
「死傷者多数だ。術師、補助監督、一般人――【帳】を出入りできない分、一般人の被害の方が深刻だな」
そうですか、と星也は痛ましい表情でカーテンを閉めた。伊地知や猪野も戦いで負傷し、現在は呪術界の息のかかった病院で入院しているらしい。
「姉さんは【帳】の中に?」
「あぁ。フォローは入れたが、結構 しんどそうだ。去年の百鬼夜行の比じゃない」
そこへ、夜蛾が重たく口を開いた。
「状況はどこまで把握している?」
「資料を読みました。五条先生が封印されたこと、それと首謀者が夏油さんだということも把握しています。それと、五条先生が封印されたのと同時に、“一般人を閉じ込める【帳】”とは別の【帳】が下り、渋谷の【帳】は計四枚となったと」
ここへ来る前に渋谷の状況は資料として読んでいる。
五条のいる渋谷駅 副都心線ホームを中心に“一般人を閉じ込める【帳】”、“五条 悟を閉じ込める【帳】”、“術師を入れない【帳】”さらに一番 外側に“一般人を閉じ込める【帳】”が下りている。