第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
「その通り。だが、猪野、虎杖、伏黒、詞織の活躍で“術師を入れない【帳】”は上がり、術師に限っては【帳】内を自由に出入りできる」
なら、猪野はその戦いで重傷を負ったのか。猪野は高専の先輩で、お調子者だが面倒見が良く、いつも場の空気を明るくしてくれていた。
「……もっと早く、ここへ来ることができていたら……」
もっと、何かできることがあったのではないか。
拳を震わせる星也に、家入が「自惚れるな」とため息を吐く。
「五条が封印されたんだ。オマエがいたところで、状況はそれほど違わないさ」
家入は突き放すような物言いをするが、そこには確かに気遣いを感じた。
――ダメだな、僕は。気を遣わせている場合じゃないだろ。
「――いってきます」
「頼んだぞ」
「気をつけてな」
頭を下げ、星也は【帳】の中へと入った。激しい戦闘の痕跡が残る渋谷の街。死亡した一般人が道路脇に何十人と横たえられていた。
五条がいるのは副都心線ホーム。夏油以外にどんな術師や呪霊がいるのか。
それに、星也は見た。五条が夏油を殺す瞬間を。
それがなぜ生きている?
それとも、誰かが夏油の死体を操っているのか?