第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
――23:05
道玄坂 SHIBUYA109前
「……俺の【十種影法術】は、最初にまず二匹の【玉犬】だけが与えられる」
術式の開示――詞織を腕に抱え、ポツリポツリと呟くように伏黒は語った。
「それ以外の式神を扱うには、まず術師と【玉犬】で調伏を済ませないとならない。手持ちの式神を増やしながら それらを駆使し、調伏を進めることで十種の式神を手にすることができる……く……ッ」
「……終わり? さっき釘の女の子とクラゲの男の子と会ったけど、皆 若いのにすごく強いね。君も、ボロボロなのに俺に近寄る隙を見せない。でも、その出血じゃ俺がなんにもしなくたって……ほら」
ゴボッと咳込み、吐いた血が詞織の顔にかかった。「あーあ」と笑う男を無視し、詞織にかかった血を拭ってやりながら続ける。
釘とクラゲ……釘崎と順平だ。二人は無事だろうか。
そう思うも、今は他を気にかけている余裕はない。
「調伏はな、複数人でもできるんだ」
だが、複数人での調伏はその後 無効になる。
あくまでも、自力で調伏しなければ式神を手持ちに加えることはできない。つまり、当の術師にとっては意味のない儀式になる。
「でもな、意味はないなりに使い方があるんだ」
そこへ、伏黒の言葉を遮るように轟音が響き、地面が揺れた。