第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
燃えて消し炭となっていく呪霊を、宿儺はつまらなそうに眺める。そこへ、「宿儺様」と背後に気配が降り立った。
赤を混ぜた真っ白なおかっぱ頭に着物を着た、少年にも少女にも見える中世的な人物だ。
「お迎えに上がりました」
『誰だ?』
その人物は答えることなく、黙って平伏する。
コイツらは自分を知っているかもしれないが、自分が知らない者は多いし、そもそも覚える気がない。
だが……いや、コイツは……。
『裏梅か!』
『お久しゅうございます』
頭を上げ、嬉しそうに目を細める裏梅に声をかけようとして、宿儺は異変を感じ取り、眉を寄せた。
「宿儺様?」
『急用だ』
短く言って身を翻すと、「左様で」と裏梅が寂しそうな表情を見せる。
『俺が自由になるのもそう遠い話ではない。ゆめ、準備を怠るなよ。“またな”、裏梅』
「御意に。お待ち申し上げております」
再び深く頭を下げる裏梅を置き、宿儺はその場を離れた。
* * *