【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第52章 スタートライン
『やっぱり慣れないわ…』
ミスティは呟いた。
『まぁ、同じ海軍本部でも以前とは別の場所で別の建物なんだから仕方ないわね。それに…』
(あの時はあの人が一緒に居た…)
── 必ず生きて戻って来い。何があっても、どういう状態でも必ず俺の所に。
── ミスティ…愛してる
『レイン…』
今でも耳に残る愛しき人の愛の言葉。確かめ合ったお互いの気持ち。此処が最後になった。姿を見たのも抱き締められたのもキスをしたのも。
(会いたい…許されるのなら今すぐにでも逢いたい)
溢れそうな思いにミスティはフルフルと頭を振り、気持ちを切り替え目的を果たすべく先を急いだ。
───
ニューマリンフォードへ来たローの目的は2つ。1つは自身の王下七武海への参入。もう1つはミスティによるパンクハザードへのエターナルログポースの入手と本部での情報収集。
ローの本懐を遂げる為には、パンクハザードへの航路と世界政府や海軍本部が持つ秘密裏の情報がどうしても必要だった。だが、海賊であるローにそれを得るのは至難の業。下手をしたら本懐を遂げる前にお縄になってインペルダウン行きだ。
そこでローは自身が七武海の1人になることで自身と仲間の身を安全圏へ。そして政府や海軍領土への往来や航路の使用を可能に。最後にミスティを使い大事に保管されているエターナルログポースと情報を盗む。
『大胆というか人遣いが荒いというか…』
フフっと笑いミスティは独りごちた。
ミスティは諜報部員としてのスキルを遺憾無く発揮し、ものの10分でパンクハザードのエターナルログポースとローへの土産には十分過ぎる量の情報を得ることに成功していた。
だが、諜報部員としての性なのかミスティの性格なのか…感じるものがあり1つの部屋のドアを静かに開けた。
───
『あれは…』
入った部屋の奥の棚に一際異彩を放つものが鎮座していた。それは雫のような形をしており透き通って居た。注意深く手に取るとそれ自身が潤っているのか表面が水のように揺らめいていた。
『これ…悪魔の実?』
口にした者は海に嫌われその身はカナヅチとなり一生泳ぐ事は出来なくなる。だが、それ以上にその身に齎される人知を超える力。この世に同じものは存在しない、それが悪魔の実。