【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第52章 スタートライン
───ポーラタング号内船尾部
『…勝手なんだから。』
ミスティは愚痴を零した。
朝、目覚めたらローの部屋に居た。しかも何も身につけずローのベッドの上でシーツに包まれていた。
鼻をかすめるローの香りが昨晩あったことを思い出させる起爆剤となりミスティの顔はみるみる赤くなった。
『…っ』
諜報部員として毒の耐性は訓練と経験で培われていた。だが、自分が受けた毒は死に至るものではなく強力な催淫剤だと分かった時、別の意味で絶望した。
催淫剤…所謂"媚薬"と言われた方が一般的だろう。自分に打たれた媚薬は即効性且つ強力なものだったに違いない。だが、ミスティは薬物に耐性があったこともあり、効果が出るのが遅かった。船に戻ってからそれは現れた。異変に気付いたが、経験上、効果が切れるのをひたすら待つしかないと分かった時、腹を括った。
誰にも知られることなく乗り切る…そう決めせっかくの宴も参加せず部屋に篭った。それなのに1番厄介な人物にバレた。
ローはミスティの異変に気付き、そしてその原因も直ぐに検討がついたようだった。
船長室に連れていかれた時にはもう何が何だか分からず身体が燃えるように熱く刺激を求めていたと思う。ローに薬が欲しい、打ってくれと懇願したが拒否された。押し寄せる快楽を求める波は満たされる事無くミスティの身体に限界を齎した。
── ロー…楽になりたい…っ
苦痛と羞恥に駆られ涙を流すミスティにローは別の救いの手を差し伸べた。
── 後悔すんなよ
ローはミスティの苦しみを受け止めた。ミスティの行き場の無い苦しみはローにより快楽となってミスティの身体に刻まれた。
『…私が頼んだようなもんよね』
苦しみの中でもローの言葉は聞こえていた。ミスティから離れようとしたローをミスティが繋ぎ止めたのだからローには何の落ち度も責任もない。ただ、申し訳なさが残った。
ミスティはローに命を助けられてから行動を共にして分かっていた。ローが世間のイメージとは全く違う男だという事に。
律儀に責任とか感じてなければ良いけど…と考えているとブーンと音がし見慣れた膜がミスティを包んだ。
(来たっ…!)
『先ずはこっちね。』
そう言うとミスティは気持ちを切り替え膜と共に姿を消した。