【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第44章 事実の穴埋め
ミスティは思った。自分がドレスローザの任務で失敗しなければ何かが違ったのだろうか、と。ドレスローザで瀕死の傷を負わなければ情報を持ち帰り役に立てたし、ウォーターセブンの任務にも参加出来た。そして今でもレインの隣に…
そこまで考えミスティは首を振った。ドフラミンゴに言われたではないか。
── 世界政府も海軍もお前なんか死んでもお構い無しさ
レインも政府の人間だ。ミスティが革命軍のスパイである事を知っていたとしたら裏切り者の自分の事など顔も見たくないだろう。或いは最初から知っていて上手く事を運ぶ為に好意がある振りをしていたとしたら…。ドレスローザへ送り込む為の人選だったのなら初めから愛し合って等いなかった事になる。どちらにせよ結局はレインの隣に居る資格等自分には無かったのだとミスティは痛感した。
『でも…まだ貴方の事が…好き…好きだよ。レイン…』
胸の辺りがギュッと掴まれたように傷んだ。両目から溢れた涙はポタポタと落ちベッドの上に散らばった新聞に染みを作っていった。
ガチャ…
『…っ!?』
ミスティは慌てて涙を拭き近くにあったタオルケットを引き寄せ顔を隠した。
「……。」
顔は隠している為、入って来た人物の顔は見えない。だが、ミスティにはそれが誰なのか分かった。
「…おい。何故こんなに散らかっている?」
いつもの冷たい声が聞こえた。
『…すみません。すぐ片付けます。』
ミスティは顔を背け散らかった新聞を掻き集めた。そんなミスティを見てローはラテックスをはめミスティに言った。
「服捲れ。傷を診る。」
『…はい。』
ミスティは服を胸辺りまで捲り腹部を晒した。ローは医療に対してはとても熱心でこうやって度々傷の状況を確認する。ただ、ローの手術の腕がピカイチなのか傷の跡は日に日に薄くなってきている。このまま経過すれば1年程で綺麗さっぱり無くなってしまうのではないかと思える程、傷跡は綺麗に縫合されている。
ミスティがそんな事を考えていると、傷に触れるローの手がある場所で止まった。
「この傷はどうした?」
ミスティの身体に残る傷は今回の傷以外にはアレしかない。
『…海賊に刺されました。』
「この医者はクソだな。」
『…深い傷でしたので助かったのが奇跡です。』