【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第42章 死の外科医
此奴をオペした時、正直助けられないと思った。
まずは受けた傷の量と場所。急所は外れていたが深く負った傷口からはまだ血が流れていた。だが、その周囲の血は固まっていた事から時間が経っているのだと分かった。同時にかなりの量の血が失われた事を意味する。
見たところ華奢な女の身体だ。背は170センチ無いぐらい。体重も45キロ程度。状況から判断するに1/3近くの血液が失われていた筈だ。
そして傷の具合。傷は大きく分けて2種類。右肩と左脚の被弾したような傷と胸から腹に掛けて切り裂かれたような複数の線状の傷。普通に考えれば右肩と左脚は銃、線状の傷はサーベルか動物の爪によるものと考えられる。
だが、俺の能力を使って見たところ傷口の状況が綺麗すぎる。特に右肩と左脚は銃によるものであれば多少の火傷跡や火薬の成分が残っていても良さそうだ。そして最も不自然なのが入口と出口の創の大きさが同一だった。銃によるものであればこんな事にはならない。まるで硬い糸のようなもので一気に身体を貫かれたような…
「糸…イト…まさかっ!?」
1人の男が浮かんだ。今の俺にとって別の意味での生きる原動力であり俺の全てを賭けてでも倒したい憎き男。悪魔の実の能力者でありガキの俺が数年身を寄せていた海賊団の船長。能力による攻撃をまじまじと見た事は無いがあの男は糸を操る。
一瞬、動揺したが今がオペ中である事を思い出し直ぐに平常心を取り戻しオペを再開した。
──
俺はオペ時の事を考えながら女の顔を見ていた。薄い金色の髪に白い肌。目は閉じられているが目鼻立ちは整っていると思う。俺はお世辞等は決して言わないが、お世辞抜きで美人だと思う。
普通にどっかの貴族の令嬢と言われても違和感は無い。寧ろ受けた傷の方が女の見た目と程遠い物だと思う。
まぁ、人の人生なんざ何処でどうなるか分からねぇ。俺だってフレバンス国民でなければ今も親父とお袋、妹のラミと普通に生活していたかもしれない。医者一家の長男として沢山の命を救っていたかもしれない。
「くそっ…」
タラレバの話をした所で戻りはしない過去と失われた命。気を紛らわす為にカルテの整理をしようとガタッと立ち上がると下から小さな呻き声がした。
『うっ…』
俺は座り直し覚醒させる為に頬をペチペチと叩いた。すると長いまつ毛が何度か揺れ女の目が開いた。
