【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第42章 死の外科医
※ロー視点
朝食後のコーヒーを片手に新聞に目を通しているとベポがバタバタと食堂に入って来た。船内は走るなと注意をする俺に構わず捲し立てるベポ。
「大変!!…あの子が…っ」
早く早くと俺を急かすベポを落ち着かせようとソファから腰を上げるとそのまま引き摺られるように医務室へ連れて行かれた。
いやぁぁぁぁっ!!
(なんだ…!?)
医務室の前に辿り着いた所で中から悲鳴のような声と共に物が割れる音や何か衝撃音が聞こえた。
(まさか…)
「ちっ!」
慌てるベポを連れ医務室のドアを開けた。
目に飛び込んできたものは医務室の中心に設置されたベッド。だが、本来そこに居るべき者の姿は無い。部屋に入るとパキパキと靴と床の間で砕けるガラスの破片。
「キャプテン!!」
ベポが叫んだ。
ベッドに近寄ると入口とは反対側に女が倒れていた。
「血が…!!」
ベポが女を抱き起こすとだらりと下がった腕から血が出でいる。
「人騒がせな奴だな。」
俺はそう言うと意識の無い女をベッドに横たわらせ腕の止血処理をした。大方、目が覚めた女が置かれた状況に混乱し点滴の針を引き抜きベッドから下りようとした。だが、ずっと寝たきりだった人間の脚力等無に等しい。力が入らず床に落ちその際に割れたガラスの破片で腕を怪我した、そんな所だろう。
「キャプテン…」
ベポは泣きそうな顔で俺を呼ぶ。ベポに引き摺られながらも辛うじて掴んでいた鬼哭を手にした。
「Room…スキャン」
俺は半球の膜の中で鬼哭を構えた。
「…大丈夫だ。怪我は大したことない。まぁ、頭を打った可能性はあるがこの高さだ。問題無いだろ。」
「良かった~」
「だが、ベポ。病人を1人にしたのはまずかったな。気をつけろ。」
「アイアイ!キャプテン!気をつける!」
此奴には診察も兼ね俺がついていると言いベポを持ち場に行かせた。ベポは此奴の事が本当に心配なのか、意識の無い此奴の耳元で後でまた来るねと言い医務室を出て行った。
「さてと…」
1人になった俺は再度、鬼哭を構え目の前の身体を調べ始めた。此奴については気になる事が山程あるが主には3つ。
1つ。急に俺達の前に姿を現した。能力者かもしれない。
2つ。何者なのか。女が身体中にあれ程の傷を受けるなど普通じゃねぇ。
3つ。傷を付けた相手。
俺は静かに目を閉じた。
